【大人の快眠教室】20分の昼寝で眠気をリセット!午後のパフォーマンスを上げる「パワーナップ」の効果
昼食後に訪れる眠気対策として始めたいのが、短時間の昼寝です。眠気と疲労感をリセットして、作業効率を上げる昼寝は「パワーナップ」と呼ばれ、取り入れている日本企業も増えてきました。日本栄養大学特任教授で、睡眠改善インストラクターの資格を持つ石川泰弘先生に、より効果的な「パワーナップ」の方法を教えてもらいました。

いしかわ・やすひろ 日本栄養大学特任教授 博士(スポーツ健康科学)。睡眠改善インストラクター、温泉入浴指導員の資格を持つ。株式会社バスクリンの広報責任者を経て、現在は日本栄養大学での講義や、睡眠・入浴によるリカバリーについて、全国で講演を行う。“お風呂教授”としてメディアでも活躍。著書に『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』(日本文芸社)など。
昼食を食べたあとに眠くなる3つの理由
午後の会議が眠すぎる、昼食後はウトウトして仕事がはかどらない……。昼間の猛烈な睡魔は、誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。こうした午後の時間帯の眠気には、いくつかの理由があります。
一つは、私たちの体に備わっている体内リズムによるもの。起床から7~8時間ほどたった14時頃はちょうど覚醒度が下がり、眠気が訪れやすい時間帯です。午後になると決まって眠くなるのは、実は自然な現象なのです。
もう一つの要因が、昼食後の血糖値の変動です。食事をとると、血液中のブドウ糖の濃度、つまり「血糖値」が上昇します。すると脳内で覚醒を維持している脳内物質の「オレキシン」を分泌する神経の活動が抑制され、強い眠気が起こると考えられます。
今度は上がった血糖値を下げようと、すい臓から大量のインスリンが分泌されると、血糖値は急降下し、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足します。それに加えて、食事を消化するために副交感神経が優位になり、強い眠気を感じさせる要因になります。

注意したいのが、朝食を抜いて昼食を一気に食べる、ラーメン+チャーハンのような炭水化物だけの昼食など、血糖値が急激に上がる食べ方です。こうした食事による血糖値の急上昇・急降下は、昼食後の眠気につながります。
また、体内リズムや食生活以前に、そもそも夜の睡眠が足りていない可能性もあります。
夜に質のよい睡眠を十分にとれているなら、午後に耐えられないほど強い眠気に襲われることはほとんどありません。反対に睡眠不足が続いていると、体内リズムによる午後の眠気も強く感じやすくなります。
「昼食後はいつも眠くなる」という人は、まずは日頃の睡眠を振り返ってみましょう。
眠いまま頑張るのは非効率!20分の昼寝でスッキリ
午後に眠くなってしまったとき、取り入れたいのが短時間の仮眠、つまり「昼寝」です。近年、昼寝を意味する「nap(ナップ)」に「power up(パワーアップ)」を組み合わせた「パワーナップ」という言葉が注目されています。
短い仮眠で心身を効率よく回復させる休息法で、日本でも近年、職場内に仮眠スペースを設けたり、勤務中の短時間の仮眠を認めたりするなど、社員の昼寝を積極的に取り入れる企業が増えています。学習効率の向上を目的に、昼寝を取り入れている中学校や高等学校もあります。

パワーナップの最大のメリットは、眠気が軽減し、その後の作業効率を高められることです。仕事中、眠いままパソコンに向かっていたら、何も進まないまま1時間がたっていた……。そんな経験がある人も多いと思います。
眠気を感じたときに、机に伏せるなどして短時間のパワーナップを取り入れると、頭がスッキリして、その後の仕事や家事が効率よく進められます。脳を休めることで思考を切り替え、気分のリフレッシュにもつながります。
実際、過去の研究でも、午後の仮眠によって主観的な眠気や疲労感が軽減し、パフォーマンスが向上することが報告されています。
(Hayashi M, et al. Clinical Neurophysiology. 1999;110(2):272–279./Hayashi M, et al. Ergonomics. 2004;47(14):1549–1560.)
効果を高める「20分パワーナップ」のポイント
パワーナップのタイミングは、午後に眠気が訪れたとき。仮眠時間は、「20分程度」を目安にします。30分、1時間と長く眠ってしまうと、深い眠りに入り、「もっと眠りたい」という欲求が強くなります。
アラームをセットする、周りの人に起こしてもらうなどして、長く眠りすぎないように注意しましょう。
パワーナップの姿勢は、デスクに伏せた状態、もしくは椅子に座ったまま背もたれに寄りかかり、楽な姿勢で目を閉じて休みます。職場ならデスク、自宅ならダイニングテーブルを使って休めばOKです。
最近は、机に伏せた状態でも体に負担がかかりにくい仮眠用枕も販売されているので、活用するのも手です。
避けたいのが、ベッドやソファに横になって眠ること。本格的な睡眠に入りやすく、20分で起きるのが難しくなります。夜の睡眠が不足している人は、そのまま1時間以上眠ってしまう可能性も考えられます。
さらに、パワーナップの効果を高めるために活用したいのが「カフェイン」の力です。おすすめは、仮眠の前にブラックコーヒーを飲むこと。
カフェインの覚醒作用が現れるまでには、摂取から20分ほどかかります。そのため、コーヒーを飲んですぐに20分程度の仮眠をとると、目覚める頃にタイミングよくカフェインが効き、スッキリと起きられるというわけです。

そのほか、周囲の音を遮断して、リラックスできる環境をつくることもおすすめです。周囲が騒がしい場合は、イヤホンを利用して外部の音を遮るのもよいでしょう。自分が心地いいと感じる音楽や好きな曲を控えめな音量で聴き、ストレスを感じにくい環境で休んでください。
教えて石川先生!“昼寝”のギモンQ&A
Q.自宅のソファで昼寝をすると、アラームをかけても起きられず1時間以上ぐっすり寝てしまいます。短い時間でスッキリ起きるにはどうしたら良いでしょうか。(40代・女性)
A.ソファに横になって寝ると深い眠りに入り、短時間で目覚めるのが難しくなります。自宅ならダイニングテーブルに伏せるか、背もたれを倒せる椅子に座った状態がおすすめです。アラームのセットに加え、「20分後に起きる」と強く自己暗示をかけてから寝ると、脳が起きる時間を意識するようになり、短時間でも目覚めやすくなります。仮眠前にブラックコーヒーや緑茶などでカフェインを摂取する方法も試してみてください。
Q.営業職で日中は外出していることが多く、昼寝をする場所がありません。午後の眠気をどうにか解消したいです。(40代・男性)
A.例えば電車で座ったときや、車を使う場合は駐車場など安全な場所に車を停めて、目を閉じて休むだけでもOKです。20分の時間がとれなければ、5分でも構いません。目や耳から入る情報を遮断し、脳を休めるとリフレッシュできますよ。移動中のすきま時間を上手に活用してパワーナップを取り入れてみてください。
Q.私の職場では昼寝をしている社員はおらず、自分の席では仮眠がとりづらい雰囲気です……。寝ているのがバレたらなまけていると思われそうです。(30代・女性)
A.昼食のあとに天気が良ければ公園で仮眠をとる、カフェに立ち寄りコーヒーを飲みながら少し目をつぶるなど、職場以外で実践してみてください。社会的に健康への関心が高まる中、生産性向上を目的とした昼寝の導入は日本企業にも広がりつつあります。いずれは「仕事の効率を上げるために20分だけ仮眠をとります!」と周囲に気兼ねなく宣言でき、パワーナップを取り入れられる雰囲気が職場にも広がっていくといいですね。
午後の眠気を解消し、パフォーマンス向上につながる「パワーナップ」の効果について紹介しました。忘れてほしくないのは、仮眠をとっているからといって、夜の睡眠時間をおろそかにしないこと。パワーナップは、夜の睡眠不足を埋め合わせるものではありません。
夜は十分な睡眠時間を確保して明日の元気を養い、昼はパワーナップで眠気を解消し、脳をリフレッシュする。一日の中で睡眠と休息を上手に取り入れながら、疲労感のない健康な体で過ごしましょう。
イラスト/中根ゆたか 取材・文/釼持陽子
寝つきが悪い、朝起きたときに疲労感がある、日中に眠くなってしまう。
これらの睡眠のお悩みには、寝ている間の「いびき」が関係している可能性もあります。不眠、疲れでお悩みの方は、いびき治療をすることで夜の睡眠や生活の質が向上するかもしれません。お悩みの方は、いびき治療専門クリニック『スリープメディカルクリニック』へご相談ください。
