【大人の快眠教室】バナナ・ヨーグルト・納豆・牛乳…“夜ぐっすり”を叶える理想の朝食とは?
睡眠に悩みがあると、「夜の時間をどう過ごすか」ばかり考えてしまいがちです。でも実は、夜ぐっすり眠れるかどうかは、朝起きたときから始まっています。朝の習慣の中でも重要なのが、体内時計を整える「朝食」です。日本栄養大学特任教授で、睡眠改善インストラクターの資格を持つ石川泰弘先生に、睡眠の質を高める「理想の朝食」について聞きました。

いしかわ・やすひろ 日本栄養大学特任教授 博士(スポーツ健康科学)。睡眠改善インストラクター、温泉入浴指導員の資格を持つ。株式会社バスクリンの広報責任者を経て、現在は日本薬科大学での講義や、睡眠・入浴によるリカバリーについて、全国で講演を行う。“お風呂教授”としてメディアでも活躍。著書に『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』(日本文芸社)など。
朝食で体内時計をリセット!睡眠リズムを整える
栄養バランスのとれた食事は、健康な体をつくるだけでなく、質の良い睡眠のためにも重要です。近年、注目されているのが「何をどれくらい食べるか」という従来の栄養学に、「何を“いつ”食べるか」という視点を加えた、「時間栄養学」という考え方です。
例えば、スイーツを午前中に食べるより、夜遅くに食べたほうが太るのは、みなさんも想像しやすいと思います。同じように、「いつ・何を食べるか」が、夜の眠りの質にも関係することがわかっています。
そのカギを握るのが、「体内時計」です。体内時計とは、朝になると目覚め、夜になると体温や血圧が下がって眠くなる、私たちの体に備わったリズムのこと。
1日は24時間ですが、人間の体内時計はそれより少し時間が長いといわれ、何もしないと体内時計は毎日少しずつ後ろ倒しになっていきます。
その“ずれ”をリセットするのに重要なのが、朝の光と朝食です。私たちの体には、脳の視床下部に「親時計」が、胃や腸、肝臓などの内臓に「子時計」が存在しています。

朝、太陽の光を浴びることでまず脳の親時計の“ずれ”がリセットされ、朝食を食べることで内臓の子時計も動き出します。2つの体内時計がそろうことで、リズムが整いやすくなり、夜の睡眠に効果的なのです。
まず大事なのは、朝食を抜かないこと。朝、何も食べないと、内臓の子時計がうまく切り替わらず、時差ボケのような“ずれ”が起こりやすくなります。「寝つきが悪い」「眠りが浅い」など、眠りに悩みがある人は、朝ごはんを食べる習慣をつくりましょう。
「朝何を食べるか」で夜の眠りが変わる
夜ぐっすり眠るには、「朝食に何を食べるか」も大切なポイントです。
睡眠に関わる成分が、「トリプトファン」です。食べ物から摂取したトリプトファンは、脳内で“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」に変化し、その後、睡眠ホルモンの「メラトニン」に変わります。
メラトニンの分泌は、体内時計が整っている証。自然な眠気が起こり、スムーズな入眠と質の良い睡眠を左右します。
トリプトファンがメラトニンに変化するには、摂取してから14~16時間ほどかかります。つまり、夜の快眠の下準備は、朝食から始まっているのです。

トリプトファンは単体で取るよりも、炭水化物と一緒に取ることで、より体内で働きやすくなります。また、「ビタミンB6」も、トリプトファンからメラトニンをつくる際に必要な栄養素です。
トリプトファンを多く含む食べ物は、バナナ、ヨーグルト、牛乳、卵、鶏肉、豆腐、納豆など。これらには、ビタミンB6も含まれています。
納豆ごはんや目玉焼き、みそ汁、サラダチキンをのせたサラダ、バナナ&ヨーグルトなどの健康的な朝の定番メニューは、夜の睡眠にも効いてくる理想の朝ごはんなのです。
朝食は、1日を元気に過ごすためのエネルギー源でもあります。朝食を抜いてしまうと、日中の活動量や集中力が低下し、だるさにもつながります。
朝しっかり食べて必要な栄養素を補給すれば、日中も快適に動くことができ、活動量が増えます。すると体がほどよく疲れて、夜は自然と眠くなります。朝食をきっかけに、昼と夜のメリハリがつき、良い睡眠サイクルが生まれるはずです。
昼食は血糖値の急上昇に要注意
睡眠のためには、昼食や夕食にも気を付けたいところ。昼食で注意したいのは、血糖値の急上昇です。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のこと。食事をとると血糖値は上がりますが、“急上昇”させないことがポイントです。
例えば、そばとかつ丼、ラーメンとチャーハンなど、“ダブル炭水化物”の食事を一気に食べると、血糖値が急激に上昇します。覚醒に関わる脳内物質「オレキシン」の働きが低下し、食後に強い眠気を感じやすくなります。
このタイミングで長時間の昼寝をしてしまうと、夜の睡眠に影響するため注意が必要です。昼食は、炭水化物だけに偏らず、主食・主菜・副菜がそろったバランスの良い定食を心がけましょう。ゆっくり食べて、腹八分目を意識することも忘れずに。
午後は眠気覚ましとして、コーヒーを飲む人も多いと思います。ただし、カフェインの取りすぎには気を付けてください。
人によっては夕方以降に飲みすぎると、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。カフェインで眠れなくなる人は、夕方以降は控えめにすると安心です。
夕食はリラックス効果のある食べ物を
夕食はリラックスにつながる食べ物がポイントになります。夜に取り入れたい栄養素の一つが、「グリシン」です。
人は深部体温が下がるタイミングで自然と眠気が訪れるため、スムーズな入眠につながります。グリシンは、体温を下げてリラックスさせる働きがあります。グリシンが含まれる食べ物は、えびやホタテ、イカなどの魚介類が挙げられます。

もう一つ、夜に取りたい栄養素が「GABA(ギャバ)」です。GABAには、興奮した神経を落ち着かせ、ストレスをやわらげる働きがあります。GABAは、トマトやカカオ、発芽玄米、キムチ、みそなどの発酵食品に含まれています。夕飯にこれらの食材を使うのもおすすめです。
そのほか、リラックス効果の高い成分が、緑茶に含まれる「テアニン」です。テアニンには、気持ちを落ち着かせる働きがあります。ただし、緑茶はカフェインも多いため、遅い時間に飲みすぎると、かえって眠れなくなるかもしれません。
最近は、緑茶をはじめ、カフェインレスの飲み物も増えています。気になる人は、夜はカフェインレスドリンクを上手に活用するといいでしょう。
教えて石川先生!食事と眠りのギモンQ&A
Q.朝は食欲がなくて食べられません。朝食抜きと不眠は関係ありますか。(30代・女性)
A.朝食を抜くことで体内時計がうまく働かず、夜の睡眠に影響している可能性があります。食欲がない場合は、バナナやヨーグルト、牛乳など軽い朝食でも大丈夫です。食べる時間がないなら、夜30分でもいいので早めに寝てみましょう。徐々に就寝・起床を前倒しにして、朝の時間に少しゆとりを持つことから始めてみてください。
Q.外食やコンビニ生活でも、睡眠のためにできることはありますか。(30代・男性)
A.自炊をしない場合でも、朝食で選ぶ食材を意識すれば睡眠にプラスに働きます。バナナやヨーグルト、牛乳は、コンビニでも売っています。卵、鶏肉、豆腐、納豆などを含んだ朝メニューをチェーン店などで食べてから出社するのも健康的です。朝食を抜かずに毎日食べることを心がけてください。ただし、夜のコンビニは店内が明るいため、体が昼間と勘違いしてメラトニンの分泌を抑えてしまう可能性があります。夜にコンビニで翌日の朝食を買う場合は、短時間で済ませましょう。
Q.夜勤があり、睡眠や生活リズムが不規則です。食事で工夫できることはありますか。(40代・男性)
A.夜勤終わりにドカ食いしてすぐ寝ると、消化にエネルギーが使われ、睡眠の質が低下します。体が休息したいタイミングに眠りが浅くなってしまうため、夜勤明けは消化にいいものを食べましょう。甘い缶コーヒーやジュースは血糖値を急上昇・急降下させ眠気につながります。特に、夜間に運転するドライバーは居眠りの危険があるので要注意。砂糖が入っていないドリンクで水分摂取を。
「いつ・何を食べるか」を考えた食生活で、睡眠の質は変わっていきます。「ぐっすり眠れる朝食」を食べて、1日を元気にスタートさせていきましょう。
イラスト/中根ゆたか 取材・文/釼持陽子
寝つきが悪い、朝起きたときに疲労感がある、日中に眠くなってしまう。
これらの睡眠のお悩みには、寝ている間の「いびき」が関係している可能性もあります。不眠、疲れでお悩みの方は、いびき治療をすることで夜の睡眠や生活の質が向上するかもしれません。お悩みの方は、いびき治療専門クリニック『スリープメディカルクリニック』へご相談ください。
