コラム
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いびきの原因と男性・女性の違い!急にいびきをかくようになる理由
いびきに悩んでいる国内人口は約2,000万人、5人に1人がいびきの問題を抱えているのが実情です。
さらに、いびきは自分だけの問題ではなく、周囲の日常生活や環境にも影響を与えてしまいます。
なぜいびきをかいてしまうのか、疲れやストレスによるものなのか、それとも重大な病気なのか…。
眠っても疲れがとれない、パートナーや家族から夜のいびきがうるさいと指摘をされている、パートナーのいびきの原因が病気ではないのか不安という方は、当記事でいびきの原因を学び、今後の対策を考えていきましょう。
いびきをかく原因と根本的なメカニズム、男性と女性によるいびきをかく理由の違いをお伝えします。
いびきが発生する理由とメカニズム
いびきは、睡眠中に喉の奥にある気道が部分的に塞がり、呼吸をする際に空気の通り道が狭くなることで音が発生する現象です。
いびきには人によって音の大きさや高低、時間間隔などの個人差が大きく、寝るときの体勢や体調により日々違いがありますが、基本的にいびきをかくメカニズムは同じです。
いびきが発生する基本のメカニズム
- 重力によって軟口蓋や舌の付根といった上気道の周りにある組織が喉の奥に落ち込み、自然と上気道が狭められやすくなる
- 上気道が狭くなると、呼吸時の空気の流れが速くなる
- 空気の流れが速くなると、気道壁の粘膜が振動する
- 粘膜の振動によって音が発生する
この振動による音が、いびきを生み出している原因です。
喉の気道が狭くなり生じるいびきのことを、喉いびきと呼びます。
習慣的ないびきは主に、喉の上気道が狭まることによって発生しますが、睡眠中に上気道が狭まるのを防ぐことができれば、いびきを防止することが可能です。
また、喉いびき以外にも、風邪をひいたときやアレルギーによる鼻炎などで鼻の粘膜が炎症を起こし、鼻の気道が塞がれた時に鼻いびきが存在します。
いびきが発生する状態で睡眠していると、血液中の酸素量が30%程度低下してしまう例もあります。いびきは睡眠の質を低下させ、慢性的な睡眠不足を招いたり、日中の集中力・作業効率の低下につながります。
また、疲れやストレスなどで一時的にいびきをかく状態なのか、慢性的にいびきがある状態なのかで、対策方法も異なります。
男性のほうがいびきをかきやすい原因
性別によっていびきをかく割合には差があり、男性は24%、女性は10%の人がいびきをかきます。
男性は女性の2倍以上いびきをかきやすい状態にあり、これは喉の構造や脂肪量などの影響があります。
男性は女性よりも一般的に喉が大きく、特に喉の筋肉や組織が太く、頑丈です。
これにより、男性の上気道は自然と狭くなりやすく、特に睡眠中に筋肉がリラックスすると、気道が塞がりやすくなります。
男性は女性よりも特に首周りに脂肪を蓄えやすい傾向があります。この脂肪が気道周辺に圧力を加え、狭窄を引き起こしやすくなります。
これにより、気道が塞がれやすくなり、いびきが生じる可能性が高まります。
男女関わらず仰向けで眠る方はいびきをかきやすい傾向にありますが、男性は女性に比べて仰向けで寝る割合が高い(※)です。
仰向けの姿勢は、舌が喉の奥に落ち込むことを促し、これが気道を塞ぐ一因となります。このため、仰向けで寝る男性はいびきをかきやすくなります。
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男性は女性に比べて体格や骨格が大きく、特に顎の部分が発達しています。
そのため、また女性より気道の長さがあり、舌が長いため、人体の構造上気道を塞ぎやすい状態にあります。
いびきをかきやすい傾向にある男性でも、脂肪量のコントロールや睡眠時の姿勢などはすぐに取り組むことができるため、悪化していく状態を放置せず積極的に対処しましょう。
特に、飲酒の機会が多い方や仕事のストレスを抱えている、体重が増えてきている方は、一時的ないびきに留まらず習慣化する可能性があります。
自分ではいびきをかいていないつもりだった方は、パートナーや家族に確認してもらう、睡眠アプリでいびきの有無を確認してみることをおすすめします。
女性特有のいびきをかきやすくなる原因
体格差により男性のほうが女性よりもいびきをかきやすい傾向にあるものの、近年ではいびきをかく女性の割合は増えています。
男性とは異なる女性特有のいびきをかく原因は、加齢や顎・喉の形にあります。
女性は閉経を迎える前後10年間(45~55歳頃)に更年期へ入りますが、その頃から急激にホルモンの分泌量が低下し始めます。
プロゲステロンという女性ホルモンの分泌量が徐々に低下し、上気道の筋肉への活動が減り、その結果、睡眠中に気道が狭くなりいびきが発生します。
更年期には不眠を伴う方や、頭痛やめまい、不安感などの精神神経系の症状と、むくみや体のほてり、寝汗、喉の渇きなど血管運動神経系、肩こりや腰痛などの症状を伴う方がいるため、総合的に睡眠の質が低下してしまいます。
「疲れやすい」「動悸がする」という症状も、更年期障害のひとつにあてはまります。
男性よりも女性は気道が短く舌が小さいことから、いびきをかきにくい体のつくりをしています。
ですが、近年では柔らかい食べ物を食べるようになり顎の発達が不十分な女性の割合が増えています。
下顎が小さく後退していると舌根が落ち込み、気道が狭くなりいびきが生じるため、20~30代であっても常にいびきをかく女性が増えているのが現状です。
女性は更年期だけではなく、妊娠中の体重増加によって気道が狭くなるなど体の変化が大きく、気づいたらいびきをかきやすい状態へ変化するのが特徴的です。
また、男性よりもストレスを溜めやすい傾向にあるため、一時的ないびきをかきやすい傾向にあります。
自分で「最近眠っても疲れがとれない」と感じたり、パートナーの女性が「頻繁にいびきをかくようになった」と感じたら、その原因を洗い出してみましょう。
一時的ないびきではなく、大きな音のいびきが習慣化している、眠っているときに呼吸が止まっている場合は、性別に関係なく適切な対処が必要です。
男女共通のいびきの原因となる単純性・習慣性いびき
いびきには多くの人が悩まされていますが、いびきをかく頻度において「単純性」と「習慣性」の2種類に分類することができます。
この2種類のいびきでは、いびきの発生の頻度や原因において異なる特徴を持っています。
単純性いびき症の特徴
一時的に、特定の日や時間帯にのみ現れるのが「単純性いびき症」と呼ばれる、一時的ないびきです。
単純性いびき症の主な特徴
- 特定の条件でいびきをかく
- いびきが短期間または短時間で終わる
- 軽度ないびきであることが多い
一過性のいびきは、風邪やアルコールを摂取したときに起きやすく、その状態が解消されればいびきはかかなくなるため、いびきをかく期間は短いです。
また、一過性のいびきは習慣性のいびきに比べ症状が軽いため、音が小さくいびきをかく時間も短いことが多いです。
単純性いびき症が起きる原因
一時的にいびきをかく主な理由は下記があります。
一時的にいびきが出る6つの原因
- 風邪やアレルギー
- 飲酒
- 喫煙
- 過度の疲労
- 睡眠時の姿勢
- 枕の高さ
風邪やアレルギーは、上気道の腫れや鼻づまりを引き起こすことが多いです。
鼻や喉の粘膜が腫れると、通常よりも気道が狭くなり、空気の流れが妨げられることでいびきが生じます。鼻づまりがある場合、口呼吸になることも多く、これがさらにいびきを促進します。
アルコールは中枢神経を抑制し、筋肉の緊張を低下させます。
就寝前にアルコールを摂取すると、喉周辺の筋肉が通常よりリラックスし、これが気道の狭窄を引き起こすことが多いです。
アルコールは中枢神経を抑制し、筋肉の緊張を低下させます。
就寝前にアルコールを摂取すると、喉周辺の筋肉が通常よりリラックスし、これが気道の狭窄を引き起こすことが多いです。
タバコに含まれるニコチン、タール、一酸化炭素などの有害物質が気道の粘膜を刺激し、炎症を引き起こします。
慢性的な炎症は、気道の粘膜を肥厚させ、腫れや狭窄を招きます。
喫煙歴が長い人ほどいびきがひどく、慢性的に生じている傾向にあります。
極度の疲労は、より深い睡眠を引き起こすことがあります。
深い睡眠中には体の筋肉がよりリラックスし、これが気道の狭窄を促進します。特に喉の筋肉がリラックスすると、いびきが生じやすくなります。
仰向けで寝る姿勢は、舌が後ろに落ち込むことを促すので、上気道を塞ぎやすいです。
この結果、気道が狭くなり、いびきが発生しやすくなります。
枕が高すぎると、首が前方に曲がり、気道が狭まります。逆に、枕が低すぎると、あごが後ろに引かれ、これも気道の狭窄を引き起こす可能性があります。
適切な枕の高さは、首と頭が自然な位置に保たれることで、気道が最も開かれた状態を維持するのに有効です。
一過性によるいびきは、例えば「風邪が治った」「お酒を飲まなかった」など、いびきの原因が取り除かれることで症状が治まるのであれば、心配する必要はありません。
しかし一過性のいびきであっても、疲労や乱れた生活が習慣化する、肥満になると慢性的ないびきとして現れてしまいます。
日頃から体調管理をし生活習慣を整えること、枕の高さを自分に合うよう調整するなどで、慢性化する前に就寝環境を整えることが不可欠です。
習慣性のいびきの特徴
一方で、習慣性のいびきには根深い健康問題や生活習慣が原因で起こることを理解しましょう。
習慣性のいびきの主な特徴
- ほとんど毎夜いびきをかく
- 睡眠時無呼吸症候群などの呼吸関連の睡眠障害と関連していることが多い
- 肥満や飲酒、喫煙習慣などの特定のライフスタイルが影響していることが多い
- 加齢によりいびきが発生しやすくなる
一時的ないびきは特定の条件で発生するため、就寝環境や寝る前の行動などを変えることでいびきの対策ができます。
しかし、習慣的ないびきは、肥満や身体的な構造が主な原因のため、継続した対策や治療が必要となり、専門の治療を行わない限りすぐに改善されることはありません。
習慣性のいびきが起きる原因
習慣性のいびきには下記のような原因があります。
習慣性のいびきとなる原因3つ
- 肥満
- 加齢
- 顎・喉・鼻の構造
肥満はいびきの一般的な原因の一つで、体重が増加すると首周りや喉の周辺、舌に脂肪が蓄積します。
これらの脂肪が喉奥の気道を物理的に圧迫し、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。
脂肪による圧迫は、気道を通る空気の流れを阻害し、振動(いびきの音)を引き起こします。
年齢が上がるにつれて、体の筋肉の一般的な衰えが見られます。喉周りの筋肉も例外ではなく、これらの筋肉が緩むと、睡眠中に気道が容易に塞がれやすいです。
加齢による筋力の低下は、特に喉の筋肉のトーンが低下し、気道が狭まるためいびきの発生につながります。
生まれつき顎の構造が小さい方、または顎の位置が後退している方、扁桃腺やアデノイドが肥大している方は、喉の構造上気道が狭くなりやすく、いびきをかきやすい傾向にあります。
習慣性のいびきのなかでも肥満によるいびきは、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスクがあります。
実際に閉鎖性による無呼吸症候群患者の70%が肥満で、いびきの悪化とともに高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中のリスクを大きく増加させてしまいます。
しかし、肥満は自身の健康管理である程度までは対処が可能なため、いびきだけでなく生活習慣病自体のリスクを低下させる活動が必要です。
急にいびきをかくようになった場合の原因は何?
以前までは寝息しかなかったけれど、急にいびきをかくようになったと感じる場合、その背景には様々な要因が考えられます。
通常、いびきは気道が部分的に塞がれることで発生しますが、突然いびきをかくようになる場合、何らかの変化や新たな健康問題が影響している可能性があります。
急にいびきをかくようになる主な原因は下記のようなものがあります。
急にいびきをかくようになる原因
- 疲れや睡眠不足などで一時的にいびきが発生する
- 体重の増加による気道の狭窄
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発症
このほか、飲酒や鼻詰まりにより一時的にいびきが発生している可能があります。
しかし、急にいびきをかくようになってから日が経っても治らない場合には注意が必要です。
以前よりもいびきの音が大きい、またいびきをかく間隔が不規則である場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を発症した可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群に気づくためには、日中の疲労感、頻繁な夜間の目覚め、朝の頭痛などの症状に注意を払う必要があります。
いびきの悪化は自分では気づきにくいため、睡眠時にパートナーや家族に呼吸が止まっていないかをチェックしてもらいましょう。その際、呼吸が何度も停止している場合は要注意です。
スマートフォンアプリを使用して睡眠パターンを記録して調査するのも有効です。
急にいびきをかくようになったからといって、すぐに重度なものとは限りません。
まずは、体の疲労やストレス、または鼻詰まりや飲酒などによる一時的ないびきなのか、慢性的にかいているいびきなのかを見極めることが大切です。
しかし、いびきに悩みはじめて10年以上経った方が大半で、重度であっても早急な対処に至ることは少ないのが現状です。呼吸がいつもと違うと感じたり、眠りの質が悪いと感じ始めたタイミングで外来へ相談することがおすすめです。
遺伝が原因でいびきをかくことは有り得る?
いびきそのものが遺伝することはありません。
しかし体質や骨格は遺伝する可能性が高いため、親が先天的にいびきをかきやすい体質・骨格の場合は、子供もいびきをかく可能性は高くなります。
いびきをかきやすい体質や人体の構造のなかで、遺伝しやすい4つの項目は以下です。
顎の小ささや後退している状態は、気道が狭くなりやすくする物理的特徴です。このような顎の形状は遺伝することがあり、親から子へと特徴が受け継がれることがあります。
顎の構造が気道のサイズに直接的に影響を与え、いびきを引き起こしやすくします。
扁桃肥大やアデノイド肥大などの上気道を構成する組織の異常は、いびきの発生に大きく関与します。これらの状態は遺伝的な要素を持つことがあり、特に家族歴がある場合、同様の症状を示す可能性が高いです。
扁桃腺やアデノイドが肥大していると、気道が狭まり、いびきが生じやすくなります。
肥満はいびきの主要な危険因子であり、体重増加によって首周りの脂肪が気道に圧力を加え、狭窄を引き起こします。肥満体質、特に脂肪がどのように分布するかは、遺伝的要素によって部分的に決まります。
親が肥満である場合、子供も肥満になりやすい傾向があります。
筋肉の質、特に上気道の筋肉のトーンや強さは、いびきに大きな影響を及ぼします。筋肉が自然と弛緩しやすい体質や、筋力の低下が起こりやすい体質は、遺伝的要素が影響していることがあります。
親が筋肉の質が低い場合、子も同様の特性を持つ可能性が高いです。
遺伝はいびきの症状に直接的に関係はありませんが、いびきをかきやすい体質は遺伝します。そのため、家族にいびきをかく方がいる場合は、現在頻繁にいびきをかいていなくても、加齢とともにいびきを発生する可能性は高くなります。
正しい生活習慣を継続し、いびきを発生させないために、就寝環境を整えて日々を送ることが大切です。
いびきは原因によって対策を変えること
いびきは多くの人を悩ませている共通の悩みですが、いびきをかく原因は人によって異なります。男女においてもいびきをかく固有の原因はありますが、対策方法に男女の違いはほとんどありません。
重要なのは、いびきのかく原因を理解し、自分の症状レベルと原因に合った適切な対策を行うことです。
いびきを放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、1日でも早い対策をとることが大切です。
いびきは咽頭部の構造異常、肥満、加齢、飲酒・喫煙、睡眠姿勢など様々な要因が絡み合い発生します。
いびきの原因は、人によって異なり複雑なため、個人でいびきをかく原因を特定するのが難しいのが現状です。
また、いびきの原因はひとつだけではなく、複数の要因が複合的に作用しているケースも多くみられます。
いびきが気になる方、周囲から指摘された方、睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は、早急に医療機関への受診・相談をおすすめします。