コラム
COLUMN
いびきと脳梗塞の関係性・脳梗塞を引き起こすいびきの特徴とは?
最近の研究では、睡眠時無呼吸症候群が脳梗塞のリスクを大幅に高めることが明らかになっています。
この記事ではいびきと脳梗塞の関係について、メカニズムや予防策などを詳しく解説していきます。
いびきと脳梗塞の関係性を知るための基礎知識
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまうことで体にさまざまな麻痺や言語障害を引き起こす恐ろしい病気です。
命に関わるだけでなく、後遺症が残ってしまうケースも少なくありません。いびきと脳梗塞の関係を知ることで脳梗塞の兆候をつかむことも可能です。
脳梗塞の症状と原因
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまい脳細胞に栄養や酸素が送られなくなる病気です。脳梗塞になると体のさまざまな場所に異変が現れます。
- さっきまで元気に話していた人が急に呂律が回らなくなったり、言葉が出てこなくなったりする
- 顔の半分が麻痺してしまい笑顔が作れなくなったり、片方の目だけを閉じれなくなったりする
- 手足に力が入らなくなり歩くのが困難になったり、箸やペンをうまく持てなくなったりする
脳梗塞の主な原因は、動脈硬化と心房細動の2つです。
動脈硬化は、血管の壁が硬くもろくなることで血管が狭くなったり、詰まりやすくなったりする状態です。
高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙などの生活習慣病が動脈硬化を促進することが知られています。
心房細動は心臓のリズムが乱れ心臓の上側の部屋である心房が小刻みに震える病気です。
心房細動になると心臓の中に血の塊ができやすくなり、その血の塊が脳の血管に詰まってしまうことで脳梗塞を引き起こすことがあります。
いびきのメカニズムと分類
いびきは睡眠中に空気の通り道である気道が狭くなることで発生します。狭くなった気道を空気が無理やり通ろうとする際に、周りの粘膜を振動させるため音が鳴るのです。
次に「いびき」の種類の詳細について解説をします。
単純性いびきは一時的に気道が狭くなるものの、完全に塞がることはなく呼吸も比較的安定しています。
疲れている時やお酒を飲んだ時、風邪を引いて鼻が詰まっている時などに誰にでも起こりうる比較的身近なものです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は気道が完全に塞がり呼吸が一時的に止まってしまう「無呼吸」状態を繰り返す病気です。
無呼吸の状態が続くと、体内の酸素濃度が低下し心臓や血管に大きな負担がかかります。
いびきが脳梗塞リスクに与える影響
単純性いびきは、多くの場合健康上の問題になることは少ないです。しかし、睡眠時無呼吸症候群(SAS) は脳梗塞を含むさまざまな病気のリスクを高めることが知られています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が脳梗塞のリスクを高めるメカニズムとして、以下の3つが考えられます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が脳梗塞のリスクを高める理由
- 酸素不足
- 血管内皮機能の低下
- 交感神経の活性化
睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって無呼吸状態になると、体内の酸素濃度が低下します。
体は酸素不足を補おうとして血管を収縮させて血圧を上昇させようとし、血液がドロドロになりやすく血栓ができやすくなることも知られています。
血管の内側にある血管内皮細胞は、血管の健康を維持する上で非常に重要な役割を担っています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)になると、無呼吸による酸素不足や睡眠中のストレスによってこの血管内皮細胞がダメージを受けてしまいます。
結果として動脈硬化が進展しやすくなり、脳梗塞のリスクが高まってしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)になると無呼吸によって体が緊張状態になり、交感神経が過剰に活性化します。交感神経が優位になると血管が収縮し、血圧が上昇しやすくなります。
脳梗塞を引き起こすいびきの特徴
ここからは脳梗塞につながる可能性のあるいびきの特徴について詳しく解説していきます。
寝ている間に頻繁にいびきをかく要因
いびきは睡眠中に空気の通り道である気道が狭くなることで発生します。
気道が狭くなってしまう原因は大きく分けて以下の3つが考えられます。
首周りや舌の付け根などに脂肪がつきすぎると、気道が圧迫されやすくなります。
アルコールには、筋肉を弛緩させる作用があります。喉の周りの筋肉も、お酒の影響で緩んでしまい、重力に負けて気道がつぶれ狭くなってしまうのです。
鼻炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻が詰まっていると、どうしても口呼吸になってしまいます。
口呼吸は、鼻呼吸に比べて舌が後方に下がり気道を狭めやすいため、いびきをかきやすくなるのです。
これらの要因に加えて、加齢による筋肉の衰えや生まれつきの顎の骨格、扁桃腺の肥大などもいびきの原因となることがあります。
要因 | 詳細 |
---|---|
加齢による筋肉の衰え | 年齢を重ねると喉の筋肉も衰えてしまい、気道を広げておく力が弱くなってしまいます。 |
顎の骨格 | 顎が小さい方や顎が引っ込んでいる方は、生まれつき気道が狭くなりやすい傾向にあります。 |
扁桃腺の肥大 | 扁桃腺が肥大していると気道を塞いでしまい、いびきをかきやすくなります。 |
大声でいびきをかくことの健康リスク
大声でいびきをかくことはそれだけ気道が狭くなっている可能性があり、健康上のリスクを高める可能性があります。
具体的には以下のようなリスクが考えられます。
大きいいびきの健康リスク
- 日中の眠気
- 心疾患のリスク
- 生活習慣病のリスク
いびきによって睡眠の質が低下すると、日中に強い眠気を感じることがあります。
十分に眠ったはずなのに日中も眠くて仕方がない、集中力が続かないといった状態が続く場合は注意が必要です。
日中の眠気は、集中力や作業効率の低下につながるだけでなく、交通事故などのリスクも高めます。居眠り運転で事故を起こしてしまってからでは遅いです。
いびきをかく人はそうでない人に比べて、心疾患のリスクが高いという報告があります。
いびきによって低酸素状態・交感神経活性化・胸腔内圧の変化などさまざまな問題が生じることで、睡眠中の血圧や脈拍が不安定になり、心臓に負担がかかるためと考えられています。
睡眠中は心臓も休息を取れる時間ですが、いびきによって心臓に負担がかかり続けるとさまざまな病気にかかりやすくなってしまうのです。
生活習慣病は毎日の生活習慣の積み重ねによって引き起こされる病気の総称です。食生活の乱れや運動不足、喫煙、飲酒、ストレスなどは生活習慣病の大きなリスクフとなります。
生活習慣病になるような生活習慣は結果として肥満となりいびきの原因になります。逆にいびきによるストレス(交感神経活性化)などが生活習慣病のリスクを高める可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS) は、睡眠中に呼吸が止まることで体内の酸素飽和度が低下し、心臓や血管に大きな負担をかけます。
その結果、高血圧や不整脈、動脈硬化などを引き起こしやすくなり、脳梗塞のリスクを高める要因となるのです。
睡眠時無呼吸症候群の条件
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、単なるいびきと異なり、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上、あるいは7時間の睡眠中に30回以上見られる状態です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、自覚症状がない場合も多く家族やパートナーから指摘されて気づくことがあります。
もし、身近にいびきをかく人がいれば「最近、疲れていない?」「日中、眠そうにしていない?」などとさりげなく声をかけてあげましょう。その上で、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性も考えて、医療機関への受診をすすめてみてください。
研究で示されたいびきと脳梗塞の関連
いびきはただの寝息の荒さではなく、深刻な病気のサインかもしれません。
いびきと脳梗塞の隠された関係について、最新の研究結果を交えながら具体的に解説していきます。
最新のいびきと脳梗塞に関する研究結果と統計データ
世界中の多くの研究者がいびきと脳梗塞の関係について研究を重ねています。
ある研究では、脳梗塞のリスクを高める可能性がある重要な健康指標であると明らかになりました。
16歳から60歳の男性を対象とした調査では、習慣的または頻繁にいびきをかく人は、いびきをかかない人と比べて脳梗塞のリスクが約2倍高いです。
さらにいびきに加えて、睡眠時無呼吸、日中の強い眠気、肥満がすべて存在する場合はリスクは8倍にも跳ね上がります。
これは、いびきをかく人の中に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者の多いことが原因と考えられています。
次に妊婦さんにおける「いびき」と赤ちゃんの成長の関係について解説します。
多くの論文をまとめて分析した結果、頻繁にいびきをかいている妊婦さんは、そうでない妊婦さんに比べて、赤ちゃんが正常な妊娠期間よりも早く生まれてしまうリスクが高いという結果が出ています。
いびきも関係がありますが、とくに睡眠時無呼吸症候群によってママのお体から赤ちゃんへの酸素供給が阻害されることが原因の一つと考えられます。
いびきの種類と脳梗塞リスクの関係
一口にいびきと言ってもその種類や程度は人それぞれです。
そのいびきが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を伴ういびきであれば、脳梗塞のリスクが非常に高まります。
睡眠時無呼吸症候群は、大きく分けて以下の2つに分けられます。
睡眠時無呼吸症候群の種類
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
寝ている間にのどの奥にある気道(空気の通り道)が狭くなってしまうことで空気の通りが悪くなり、呼吸が止まってしまうタイプです。
脳の呼吸中枢(呼吸をコントロールする司令塔)がうまく働かなくなることで呼吸が不安定になり、止まってしまうタイプです。
脳からの指令がうまく伝わらなくなってしまい、呼吸が乱れてしまいます。
研究から考えられるいびきと脳梗塞の予防策
多くの研究で「いびき」、とくに睡眠時無呼吸症候群が脳梗塞のリスクを高めることが明らかになってきました。
しかし、必要以上に不安になる必要はありません。なぜなら、いびきや睡眠時無呼吸症候群は適切な対策をとることで改善できるからです。
具体的には以下のような予防策が考えられます。
- 生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群のリスク因子として肥満、飲酒、喫煙などがあります。これらの習慣を見直すことで、症状の改善が見込めます。 - 睡眠環境の改善
枕の高さを調整したり、横向きで寝るようにしたりするだけでもいびきが軽減することがあります。 - マウスピースの使用
歯科医院で作成する専用のマウスピースを装着することで寝ている間に気道を広げ、呼吸をしやすくすることができます。 - CPAP療法
鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げて呼吸をサポートする治療法です。
もし、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は早めに医療機関を受診し、検査を受けるようにしましょう。
脳梗塞予防のためのいびきへの対策
日常生活でできるいびき対策や医療機関での治療法、そしてストレスとの関連性について詳しく解説していきます。
脳梗塞予防に効果的なものばかりですので、脳梗塞に不安がある方は必見な内容です。
脳梗塞予防のためのいびきを軽減する生活習慣の変更
いびきを解消するためには日々の生活習慣の改善が効果的です。
寝室の湿度は50~60%が最適で、加湿器や濡れタオルを使って適切に保つことが重要です。乾燥すると気道が狭くなりやすいため、湿度管理に注意しましょう。
また、枕は高さが合わないと首や肩に負担がかかり、気道を圧迫する可能性があるため、自分に合った枕を選ぶことが大切です。
寝る前の食事は控えめにし、食事は寝る3時間前までに済ませるよう心がけましょう。
飲酒はほどほどにし、寝る数時間前までに済ませることで喉の筋肉が弛緩して気道が狭くなるのを防ぎます。
また、規則正しい睡眠や適度な運動、禁煙もいびきの軽減や健康の維持に効果的です。
これらの生活習慣の改善はいびきの軽減だけでなく、健康的な生活を送る上でも非常に重要です。
いびきとストレス管理の関連性
現代社会ではストレスが避けられないものです。ストレスは、いびきにも深く関わっています。
ストレス軽減には、十分な睡眠や適度な運動、趣味に時間を費やしてリラックスすることが有効です。
また、深呼吸や腹式呼吸などの呼吸法を取り入れることで、リラックス効果が期待できます。
ストレスを適切に解消することが、いびきの改善や心身の健康維持に効果的です。
過剰なストレスを感じると、セロトニンという神経伝達物質が減少します。
セロトニンの作用の1つである「上気道を広げる筋肉の刺激」も低下することで、無呼吸やいびきが起こりやすくなります。
いびきは睡眠中の気道が狭くなることで発生し、放置すると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
とくに睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴ういびきは、脳梗塞のリスクを高めることが多くの研究で明らかになっている病気です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に呼吸が何度も止まってしまう病気で、体内の酸素濃度が低下し心臓や血管に負担をかけます。結果として高血圧や動脈硬化などを引き起こしやすくなり、脳梗塞のリスクが高まるのです。
いびきが気になる方は生活習慣を見直したり、医療機関を受診したりして適切な対策を検討しましょう。