舌根沈下は命に関わる?余命への影響と原因・治し方を医師が徹底解説
「いびきがうるさいと言われる」「寝ても疲れが取れない」
そんな悩みの裏には、舌根沈下(ぜっこんちんか)という状態が隠れているかもしれません。そして、この舌根沈下、単なるいびきの原因にとどまらず、放置すると命に関わる危険性をはらんでいることをご存知でしょうか?
この記事では、舌根沈下がなぜ危険なのか、その原因からご自身でできる対策、そして医療機関での専門的な治療法まで、スリープメディカルクリニックの医師が徹底的に解説します。
特に、多くの方が不安に思う「余命」との関係についても、医学的根拠に基づいて詳しくご説明します。ご自身の、あるいはご家族の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。
舌根沈下とは?

舌根沈下とは、その名の通り、舌の根元(舌根)が喉の奥に沈み込んでしまう状態を指します。特に、睡眠中に仰向けで寝ている時に起こりやすく、空気の通り道である気道を狭めてしまう原因となります。

上の図のように、正常な状態では舌は上顎についており、気道は十分に確保されています。しかし、何らかの原因で舌を支える筋肉が緩むと、重力に従って舌が喉の奥へと落ち込み、気道を塞いでしまうのです。
この気道の閉塞が、いびきや睡眠中の呼吸の乱れ、さらには睡眠時無呼吸症候群(SAS)を引き起こす大きな要因となります。
なお、舌根沈下はいびきの大きな原因のひとつですが、他のいびきの原因や自分でできる改善策をより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
舌根沈下が起こるメカニズム
舌根沈下は、主に以下のメカニズムで発生します。
1.筋肉の弛緩: 睡眠中は全身の筋肉が緩みますが、舌を支える筋肉も例外ではありません。
2.重力の影響: 仰向けで寝ると、重力によって舌が喉の奥に引き込まれます。
3.気道の狭窄: 舌が落ち込むことで、咽頭部の気道が物理的に狭くなります。
4.呼吸障害: 気道が狭まることで、空気の流れが制限され、いびきや無呼吸が発生します。
舌根沈下と余命の関係

「舌根沈下は命に関わるのか?」という問いに対して、結論から言うと、「間接的に命に関わるリスクがある」というのが答えになります。舌根沈下そのものが直接死因となることは稀ですが、これが引き起こす睡眠時無呼吸症候群(SAS)を放置すると、死亡リスクが大幅に高まることが多くの研究で明らかになっています。
なお、睡眠時無呼吸症候群の症状やセルフチェック方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が寿命を縮める
舌根沈下は、睡眠時無呼吸症候群、特に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の主要な原因です。睡眠中に気道が繰り返し塞がれることで、体は深刻な低酸素状態に陥ります。この状態が毎晩続くことで、心臓や血管に大きな負担がかかり、様々な生活習慣病を引き起こすのです。
ウィスコンシン大学の研究によると、重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)は健康な人と比べて深刻なリスク増加が確認されています。死亡率が約3.8倍に上昇し、心血管系イベントの発生率が健常者の5.2倍に増えることも示されています。(参照:医療法人社団 春回会)
これらの研究結果は、舌根沈下を放置することが、いかに危険であるかを示しています。
睡眠時無呼吸症候群が引き起こす合併症
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、以下のような重篤な合併症のリスクが高まります。
| 合併症 | 主な症状・影響 |
|---|---|
| 高血圧 | 血圧上昇や心臓への負担増加を招く |
| 心筋梗塞 | 心血管への負荷や酸素不足によりリスク上昇 |
| 脳卒中 | 脳血流の異常を引き起こしやすくなる |
| 糖尿病 | インスリン抵抗性が悪化しやすい |
| 不整脈 | 心拍の乱れによる動悸やめまい |
日本睡眠学会の研究によると、これらの合併症は睡眠時無呼吸症候群の重症度に比例して増加することが確認されています。
舌根沈下のセルフチェック

ご自身が舌根沈下の傾向があるかどうか、簡単なセルフチェックで確認してみましょう。以下の項目に3つ以上当てはまる場合は、注意が必要です。
- いびきをかく、または家族からいびきを指摘される
- 朝起きた時に口が乾いている、喉が痛い
- 十分な睡眠時間をとっているはずなのに、日中に強い眠気を感じる
- 寝ても疲れが取れず、熟睡感がない
- 集中力が続かない、注意力が散漫になりがち
- 朝、頭痛がすることがある
- 肥満気味である、または最近体重が増えた
- 仰向けで寝る習慣がある
- 口呼吸をしていることが多い
- 顎が小さい、または下顎が後退している
重症度の目安
| 該当項目数 | 重症度 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 0〜2個 | 低リスク | 生活習慣の改善で予防 |
| 3〜5個 | 中リスク | セルフケアと経過観察 |
| 6〜8個 | 高リスク | 早めの医療機関受診を推奨 |
| 9〜10個 | 非常に高リスク | 速やかに専門医を受診 |
このチェックリストはあくまで目安です。正確な診断のためには、専門の医療機関を受診することが不可欠です。
舌根沈下の原因

舌根沈下は、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。主な原因として、以下の4つが挙げられます。
1. 加齢による舌の筋力低下
全身の筋肉が年齢とともに衰えるように、舌を支える筋肉(舌骨上筋群など)も衰えていきます。これにより、睡眠中に舌を適切な位置に保持することが難しくなり、喉の奥へと落ち込みやすくなります。
特に40歳以降は筋肉量が急速に減少するため、中高年以降で舌根沈下のリスクが高まります。
2. 肥満による喉周りの脂肪沈着
体重が増加し、首周りや喉の内部に脂肪が蓄積すると、気道そのものが狭くなります。その結果、少し舌が落ち込んだだけでも気道が塞がれやすくなり、舌根沈下のリスクが高まります。
BMI(体格指数)が25以上の方は、特に注意が必要です。痩せ型の方でも無呼吸症候群になるリスクはありますが、肥満はより大きなリスク要因となります。
3. 骨格的な特徴
アジア人は欧米人と比較して、下顎が小さく、後退している傾向があります。このような骨格の場合、もともと舌が収まるスペースが狭いため、仰向けになると舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。
これは遺伝的な要因であり、予防が難しい側面もあります。
4. その他の要因
- 飲酒・喫煙: アルコールは筋肉を弛緩させる作用があり、舌や喉の筋肉も例外ではありません。また、喫煙は喉の炎症を引き起こし、気道を狭める原因となります。
- 口呼吸: 鼻炎などで鼻が詰まり、口呼吸が習慣になっていると、舌が下がりやすくなり(低位舌)、舌根沈下を誘発します。
- 疲労や睡眠薬の服用: 過度な疲労や一部の睡眠薬も、筋肉の弛緩を促し、舌根沈下のリスクを高めることがあります。
- 扁桃腺肥大: 扁桃腺が大きいと、物理的に気道が狭くなり、舌根沈下が起こりやすくなります。
自分でできる予防・改善法

舌根沈下は、日々の生活習慣を見直し、舌の筋肉を鍛えることで、ある程度の予防や改善が期待できます。
ただし、これらは症状が軽度な場合に有効な対策であり、根本的な解決には専門的な治療が必要な場合が多いことをご理解ください。
1. 舌のトレーニング(口腔筋機能療法)
舌や口周りの筋肉を鍛えることで、舌が正しい位置に保たれやすくなります。これらのトレーニングは、口腔・咽頭の筋肉を鍛える方法として医学研究で効果が報告されており、毎日続けることが大切です。
◆あいうべ体操
- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を横に大きく広げる
- 「うー」と唇を前に突き出す
- 「べー」と舌を下に思い切り伸ばす
この1〜4を1セットとし、1日に30セットを目安に行いましょう。

◆舌回し体操
1.口を閉じたまま、舌先で歯茎の外側をなぞるように、ゆっくりと大きく回します。
2.右回りを20回、左回りを20回、それぞれ行います。
◆舌押し体操
1.舌の先を上の前歯の裏側に押し当てます。
2.そのまま舌全体を上顎に押し付けるように力を入れます。
3.5秒間キープして、ゆっくり力を抜きます。
4.これを10回繰り返します。
舌トレーニングについては、こちらの記事も参考にしてください。
2. 生活習慣の改善
- 横向きに寝る
仰向けで寝ると重力で舌が落ち込みやすくなるため、横向きで寝る習慣をつけましょう。抱き枕などを使うと、自然な横向き寝を維持しやすくなります。 - 適正体重の維持(減量)
肥満は気道を狭める大きな原因です。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、適正体重を維持することが重要です。体重を10%減らすだけでも、睡眠時無呼吸症候群の症状が大幅に改善することが研究で示されています。 - アルコールや睡眠薬を控える
就寝前の飲酒は、筋肉を弛緩させ舌根沈下を悪化させます。また、睡眠薬の服用については、自己判断で中断せず、必ず医師に相談してください。 - 鼻呼吸を意識する
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など、鼻詰まりの原因となる疾患がある場合は、耳鼻咽喉科で治療を受け、鼻呼吸を促しましょう。
医療機関での治療法

セルフケアだけでは改善が見られない場合や、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、専門の医療機関での治療が必要です。代表的な治療法には、以下の4つがあります。
治療法の比較表
| 治療法 | 適応 | 保険適用 | 費用目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|---|
| CPAP療法 | 中等症〜重症 | ○ | 月5,000円程度 | 効果が高い | 装置の装着が必要 |
| マウスピース | 軽症〜中等症 | ○ | 1〜3万円 | 持ち運びが簡単 | 重症には効果限定的 |
| 外科手術 | 骨格的要因 | △ | 10〜50万円 | 根本的な改善 | 入院が必要 |
| レーザー治療 | 軽症〜中等症 | × | 15〜30万円 | 日帰り可能 | 自由診療 |
1. CPAP(シーパップ)療法
- 概要: 鼻に装着したマスクから空気を送り込み、その圧力で気道が塞がるのを防ぐ治療法です。睡眠時無呼吸症候群の治療法として最も標準的で、効果が高いとされています。
- メリット: 物理的に気道を開くため、重症の患者さんにも高い効果が期待できます。多くの研究で、生命予後の改善効果が証明されています。
- デメリット: 装置を毎晩装着する必要があり、慣れるまでに時間がかかることがあります。また、旅行や出張の際に持ち運びが必要です。
2. マウスピース療法
- 概要: 就寝中に特殊なマウスピースを装着し、下顎を前方に少し突き出させることで、舌の落ち込みを防ぎ、気道を広げます。
- メリット: 持ち運びが簡単で、CPAP療法のような装置は不要です。軽症から中等症の患者さんに特に有効です。
- デメリット: 保険適用で作成するには、専門の医療機関での検査・診断が必要です。重症の患者さんには効果が限定的な場合があります。
3. 外科手術
- 概要: 喉の奥にある扁桃や軟口蓋の一部を切除(UPPP)したり、顎の骨格を前に移動させたりすることで、物理的に気道を広げます。
- メリット: 根本的な原因を取り除くため、治療が成功すればCPAPやマウスピースから解放される可能性があります。
- デメリット: 手術には入院が必要であり、身体的な負担やリスクが伴います。また、効果には個人差があります。
4. レーザー治療
- 概要: いびきの原因となる口蓋垂や軟口蓋の粘膜をレーザーで引き締めることで、気道の閉塞を改善する治療法です。
- メリット: 切開や縫合が不要で、痛みやダウンタイムがほとんどありません。日帰りで治療が可能です。
- デメリット: 効果の持続期間には個人差があり、複数回の治療が必要な場合があります。また、保険適用外の自由診療となります。
当院のレーザー治療「スノアレーズ」について
「スノアレーズ」は、当院が提供する独自の医療レーザー治療で、喉や口蓋の粘膜にレーザーを照射し、組織を引き締めて形状を整えることで、気道の閉塞を改善する治療法です。
切開や縫合は必要なく、いびきや軽度〜中等度の睡眠時無呼吸の改善を目指す方に適しています。
- 痛みが少ない:レーザー照射のみで治療を行うため、メスを使う手術と比べて痛みが大幅に軽減されます。ご希望の方には無料でスプレータイプの表面麻酔も利用でき、安心して受けられます。
- 施術時間は約15分:短時間で完了するため、通院の負担が少なく、仕事や家事の合間にも治療が可能です。
- ダウンタイムほぼなし:腫れや強い痛みがほとんどなく、治療後すぐに日常生活へ戻れるのも特徴です。
- リスクが低い:喉の表面に軽度の腫れが出る場合はありますが、後遺症が残るリスクは非常に低く、安全性の高い治療です。
- オーダーメイド照射:患者様一人ひとりの喉の状態やいびきの原因に合わせてレーザーの強さや範囲を調整するため、より高い改善効果が期待できます。
- 費用(自由診療):初回トライアルは 21,780円(税込)
詳しい治療法につきましては、いびきレーザー治療「スノアレーズ」のページをご覧ください。
また、治療が適しているかどうかは、お身体の状態によって異なります。まずは一度、専門医の診察で確認してみてください。
【医療従事者の方へ】舌根沈下のポジショニングと看護

このセクションでは、医療従事者の方向けに、特に意識レベルの低下が見られる患者さんの舌根沈下への対応について解説します。
気道確保の基本
意識障害や鎮静状態にある患者さんでは、舌を支える筋肉が弛緩し、舌根沈下による気道閉塞が起こりやすくなります。初期対応の基本は、用手的気道確保です。
1.頭部後屈顎先挙上法: 片手を患者さんの額に置き、もう一方の手の指先を顎の先端(オトガイ部)に当てて、頭を後屈させながら顎先を持ち上げます。
2.下顎挙上法: 頸椎損傷が疑われる場合に用います。両手の示指・中指で下顎角(エラの部分)を掴み、前上方に持ち上げます。
ポジショニングによる対応
用手的気道確保と並行して、適切なポジショニングを行うことが重要です。
肩枕の挿入: 患者さんの肩の下に、折りたたんだタオルやクッションを挿入し、首を自然に後屈させます(スニッフィングポジションに近い体位)。これにより、気道の軸が直線化され、開通しやすくなります。
側臥位(回復体位): 自発呼吸があり、嘔吐のリスクがある場合に有効です。舌が横にずれるため、気道閉塞を防ぎます。
これらの対応は、あくまで一時的な気道確保の方法です。根本的な原因の評価と治療、必要に応じて経口・経鼻エアウェイの挿入や気管挿管の準備を並行して進める必要があります。
よくある質問(Q&A)

Q1. 舌根沈下は自然に治りますか?
A. 軽度の場合は、生活習慣の改善や舌のトレーニングで改善する可能性があります。しかし、加齢や骨格的な要因が原因の場合は、自然治癒は難しく、専門的な治療が必要になることが多いです。
Q2. 舌根沈下と睡眠時無呼吸症候群の違いは何ですか?
A. 舌根沈下は「舌が喉の奥に落ち込む状態」を指し、睡眠時無呼吸症候群は「睡眠中に呼吸が止まる病気」です。舌根沈下は睡眠時無呼吸症候群の主要な原因の一つですが、すべての舌根沈下が睡眠時無呼吸症候群を引き起こすわけではありません。
Q3. 舌根沈下は何科を受診すべきですか?
A. 睡眠外来、耳鼻咽喉科、または呼吸器内科を受診するのが適しています。どの科が良いか迷った場合は、まずは耳鼻咽喉科で構造をチェックし、いびきや無呼吸が強いと感じる場合は睡眠外来を受診すると安心です。必要に応じて、呼吸器内科から睡眠外来を紹介してもらえることもあります。
Q4. 保険適用の治療はありますか?
A. はい、CPAP療法とマウスピース療法は、一定の条件を満たせば保険適用となります。ただし、保険適用を受けるには、医療機関での睡眠検査(PSG検査またはアプノモニター)で一定以上の重症度が確認される必要があります。
Q5. 子供でも舌根沈下は起こりますか?
A. はい、子供でも起こります。特に、扁桃腺やアデノイドが大きい子供は、舌根沈下や睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。いびきや口呼吸が見られる場合は、小児科や耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
Q6. 舌根沈下を放置するとどうなりますか?
A. 放置すると、睡眠時無呼吸症候群が進行し、高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病などの重篤な合併症のリスクが高まります。また、日中の眠気による交通事故や労働災害のリスクも増加します。
まとめ|早期受診の重要性

舌根沈下は、単なる「いびき」の問題ではなく、睡眠の質を低下させ、日中の活動に支障をきたすだけでなく、長期的には高血圧、心疾患、脳卒中などの重大な疾患のリスクを高めることが多くの研究で示されています。
セルフチェックで当てはまる項目が多かった方、ご家族からいびきや無呼吸を指摘された方は、決して放置しないでください。
「ただのいびきだから」と軽視せず、まずは専門の医療機関に相談することが、ご自身の健康と未来を守るための第一歩です。当院では、最新のレーザー治療やCPAPなど患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案しています。どうぞお気軽にご相談ください。
大阪大学医学部を卒業後、大学病院や一般病院での臨床経験を経てレーザー治療を中心に専門性を磨き、日本レーザー医学会認定医1種や日本抗加齢医学会専門医の資格を取得。その豊富な実績が評価され、某大手クリニックで総院長を務めるなど、10年以上にわたり医療の最前線で活躍しています。また、著書『医師が教える最強のメンズ美容ハック』(幻冬舎)などを通じて、レーザー治療や健康管理に関する情報を積極的に発信。現在は、その長年の知見と技術力を活かし、いびきのレーザー治療クリニックを監修し、患者一人ひとりの悩みに寄り添った安全かつ効果的な治療を提供しています。